東日本旅客鉄道株式会社(以下JR東日本)は2022年7月28日、利用者が特に減っている路線ごとの収支を発表しました。
それによると、100円の利益を出すために1万5000円の費用が掛かるほどの深刻な状況の路線もある事が分かりました。
都市部のような儲けている路線に比べて、地方ローカル線の経営は非常に厳しいです。今回は、そんな地方ローカル線の収支状況と、今後路線が存続する為に何が必要なのか解説していきたいと思います。
35路線、66区間の収支を公表
今回の発表では、平均通過人員が、2019年度実績において2,000人/日未満の線区を掲載対象線区とされています。結果は以下の通りです。
参照URL:平均通過人員2,000人/日未満の線区ごとの収支(2019年度)
平均通過人員2000人未満の35路線、66区間では、全てが赤字となっています。これは鉄道会社としてはかなり危うい状況です。
最も収支率が悪かった路線としては、久留里線の久留里~上総亀山間で、収支率は0.6%、営業係数は15,546円でした。
営業係数とは?
営業係数とは、鉄道会社の路線で、100円の利益を出すのにいくらの費用をかけているかを表した数字です。営業費用を運輸収入で割り、100をかけた数値となります。
上記の久留里線は、初乗り運賃にも満たない100円を稼ぐのに15,546円の費用がかかっていることになります。これは衝撃的な数字です。
久留里線を聞いたことのない方も多いと思いますが、首都圏の千葉県を走る路線で、最高の赤字路線となっているのです。
推定ですが、最も儲かっている山手線の営業係数は50円程と言われているので、今の半分の運賃でも黒字になる計算です。
いかに地方ローカル線の収支が厳しいかが浮き彫りになっています。
地方路線は以前より経営が厳しい
そもそも今回の結果を公表する以前より、JRの地方ローカル線は非常に経営が厳しい状況になっていました。
海峡線につながる青森県の津軽線は、かつて優等列車、寝台列車が数多く走っていたJR発足当時の1987年時点で、10,813人/日もの平均通過人員(輸送密度)を誇っていました。
しかし、北海道新幹線が開通し、海峡線を走る特急列車が消滅した結果、2019年時点では720人/日の輸送密度となってしまいました。
ちなみに、国鉄末期の経営が悪化した時期には、「輸送密度4000人/日未満」の路線はバス転換が適当と判断され、ローカル線がバスに転換されたり、第三セクターとして経営が切り離された路線も多くありました。
JR東日本が今回公表した赤字路線33路線66区間は、国鉄時代には廃止かバス転換が適当と判断されていたことでしょう。
赤字路線の未来とは?
今回の公表にあたって、JR東日本の高岡崇執行役員は28日の記者会見で「鉄道は大量輸送が前提で、インフラ維持には非常にコストがかかる。赤字路線だからといって即廃止ではないが、鉄道が最適ではないと考えられる区間があるのも事実」と発言しました。
この発言からも、経営者的には廃止にしたいが、公共交通なので切り捨てると批判が集中するから地元にいかに穏便に丸投げできるかといった、魂胆があるのでしょうね。
しかし、いくら収支的に赤字と言っても、朝夕の通学時間帯には学生で超満員状態で運行している列車も数多くあります。
今後10年くらいですぐに廃止にはしないと思われますが、存続のためにもいかにして集客をするかが課題となってきます。
のってたのしい列車で集客も
JR東日本は、「のってたのしい列車」と題して、地方ローカル線に観光列車を走らせ、車内で地元の名産品を販売したり、絶景ポイントをアナウンスしたりと、ローカル線だからこそある魅力を積極的にPRしています。
一例として、秋田県と青森県を結ぶ、普段は大赤字の五能線があります。
「リゾートしらかみ号」を運行し、開放感ある車内から、雄大な白神山地や夕陽が沈む日本海など、美しい風景を楽しめます。土日や観光時期には多くの旅行客が乗り混雑します。
このような旅行客誘致の為に、地方自治体とJRが協力して盛り上げていくという例もあります。
まとめ
今回の赤字路線の収支公表により、厳しい現実が浮き彫りとなりましたが、今後はJRと自治体が協力して、いかに赤字路線の魅力をPRしていけるかが存続のカギとなります。
コメント